『X-MEN ファーストクラス』

元々前評判も高いしレビューとか読んでやってることも好みなのは分かってたので安心して楽しめました。
冷戦構造の重力の中で秘密結社とCIAに協力するミュータントたちの異能合戦ということでこれはラノベ。チャールズ×エリックの愛と悲しみの軌跡ということでラノベ。キャラクターを描くためにやってることがあんまり掘り下げられないとこもラノベ

X-MENという異能とはなんぞやみたいなことをやってきたシリーズで、もちろんここでもあれやこれやとネタが投下されているのでその真っ当さが好ましかったです。前日譚ということで主役二人の道が分かたれて終わるんだけどある意味「最低限の共通理解はここだよな?」という問いかけで終わる。異能モノの前提条件というか。そしてその前提条件はオールドスクールゆえに今のジャパニーズオタクカルチャアではないがしろにされている部分であった。石ノ森章太郎くらいまで遡る感覚。異能者は誰がために、という。昨今のアメコミをリアル路線でっつー流れの中でも、すごく見所のある映画だと思いました。異能バトルのアイデアとアクションの密度、特殊能力の分かりやすさ見やすさはもちろんですが悪役達のファッションもスーツで決めていて華やかだしセットや美術周りもオサレ。インスパイアされたという007シリーズは基本的にアホみたいなお話ですが、ネタの組み合わせ方で世界の危機をエージェントが救うお話もラノベライゼーションしてこんなにオシャレな冷戦アメコミ異能に出来るんだなと。
悪役のヘルファイアクラブの描写が中二マインド的にたまらなかったw「俺もああいうギラギラした世界で活躍してえw」という悪の秘密結社ドリーム感がハンパない。だってホストみたいな派手なスーツ着てCIAの基地に乗り込んで無双するんだぜ?かっこよすぎだろ。
しかしアメコミの弱点はいかに原作のヘンテコなルックスを克服するのかという点であり、ラストのマグニートーが角の生えたヘルメットとマント姿でドヤ顔で終わってしまうのはもったいないなあ。せっかくオシャレな雰囲気だったのに。

クライマックスでそれまで語られたテーマが収束していく(バラけていく)瞬間はかなり興奮できる。降り注ぐミサイルの雨を前にして異能者は何をすべきか。それまで敵対していたアメリカとソ連が同じ悪意を異能者に向けてミサイルにのっけてヒャッハーですよ。それを経験してしまったらやっぱりこうなるかと。差別と被差別って視線で、ここから始めなきゃいけないのかと思った。まあでもシリアスではあるけど別に暗すぎるということもないポップなフィルムに仕上がっている優れた娯楽作品でした。