第一部完結ということわけで、記念に。うん。よい作品だった。すごくおもしろい作品ではないけど、よい作品だった。ここでのすごくおもしろいというのは異能バトルとしての快楽原則にガンガンにカンフル剤ぶっこんで盛り上がるように書かれていること、なので、そうなっていないということは、つまりそっけなさを感じてしまったのだけれど、しかし異能バトルというジャンルにおいての、オタクの流行がすでに終わっているかに思えるジャンルにおいての思索、現代と地続きの世界の、そこに生きる少年少女たちにひとつの終わりを迎えさせること、どういうプロットを用意すれば終わりらしきものにたどり着けるのかという思索において妥当なものが用意できたのではないかと思います。

作中の設定や、キャラクターのあらゆるドラマを運命的に収束させるというようなものではなくて(おそらくはそういうものが傑作とよばれる条件にされることが多いとはいえ)、それらの上澄みをすくいながら、物語のおわりに用意されたのは、戦争を回避すること、というものだった。

なんだよ〜、少年漫画ふうエンタメ冒険活劇バトルモノじゃないのかよ〜、という反応も当然だけど、まあこれも時代性との格闘だと思います。「ラノベに政治を持ち込むなよ、純粋に楽しみたいだけなのに」といった極端な物言いがなされるほどアクチュアルには書かれていないし、しかし、作者が、自分が数年間関わってきたキャラクターたちに、戦争を回避させる役割を与えておこう、と思う程度には、時代性を抱え込んでいるということだったのかなと。

ざっくりと、禁書目録化物語マッシュアップラノベが、2016年に、こういう戦争回避のドラマで終わったんだというそういう認識でいいのではないかと思います。戦争回避というか、クライマックスらしく派手なバトルではあるんだけど、トライブ同士の、国家的な全面戦争を起こさせないためのドラマにおいて、登場人物たちにひとつのピリオド、安らぎを与えるというような終わり方をしたので、第一部完結ということなのでしょう。

作中のアレコレがどうこうというものを分析して突っ込んだり褒めたりするほどではないけど、少年少女たちはいったい何を背負わされてようとし続けているのかという問いは、まだ続いています。まあ、恋愛をするか、戦争をするか、という、なんかニコニコ動画に投稿される曲のタイトルみたいになっているけどw 現実の恋愛にも戦争にもあんまり興味ないなあという暮らし向きの場合には、よりゲーム的、観念的なビジョンの中で、ハンターハンターや、ドリフターズや、フェイト世界とかで、現代の学園の異能とは別のリアリティの楽しみもあるようですから両方を楽しむのがいいんじゃないかなあという。