見ていてとりたてて何か刺さったりしたわけではないけれども、カバネリが意外なことに亡国のアキトとだいたい同じような構造になっていた。兄と妹、そこに関わるヒロイズムの化け物、敵の残党の赦し、人種差別友敵差別のアナロジーとか。アンバランスなところもw 
うるさめのジャズっぽい曲をフィルムに貼る作品もガンダムサンボルとか文豪とかハイキューとかでちょくちょく増えているし、地味に10年代の地下水脈として重要になるのかもしれない。なったところでなんだって話ですが。でも高森奈津美の、ちょっと強めに出す感じの、ローズヒップとかはいふりの江戸っ子のあの演技の先鞭をつけたのは亡国のアキトのサラじゃないかなあと。以前にもあったかなあ、ああいうの。

カバネリが進撃じゃんっていう、まあサルでも分かる元ネタ土台を使っていて、ギアス原作の脚本家がそのスピンオフの採用した構造と力に引っ張られたっていうなんだか妙な感じだけれども。まあ文脈のスタイリングのことですよね。「ほにゃらら(人気作品)みたいなお話を自分で考えてやる」という。ふわっとした印象でしたが、まあよかった。
春のアニメでは元ネタをどうミックスするのかということでカバネリとクロムクロがちょうど1クールと2クールでの素材への手つきの違いみたいな部分で分かりやすく比較できそうです。クロムクロを進撃っていうのはちょっと強引かもしれないけれども、普通に筋運びは進撃っぽいんですよ。特に敵がやってきて謎の遺跡アイテムとか記憶改ざんネタとかなんか重要なことが分かるのかと思ったら自爆したり意図せず殺しちゃったりでちょい見せになって腰砕けとかね。進撃ですよ、ああいうのは。
元ネタの相互不信な人間関係とか軍国趣味とか神経症的なキャラ造形とかの部分をほとんど全部裏返してクロムクロは異様に健康的だけど。
駆逐してやるとか、心臓をささげよとかが俺は鬼を斬る、それだけだとか軍曹シゴキとかに反転してギャグ扱いになってるところなんかもまあ、どことなく子供が好きなものを大人が茶化しているような印象もあるんだけどもw 回帰的ちゅうか円環的ちゅうかエヴァガンパレマブラヴ、進撃、クロムクロエヴァというような。

いや、進撃のことあんまり知らないけど、記憶改ざんとかやり始めたおかげである部分では、クロムクロのプロットが2クールで終われる進撃の巨人の構造に見えてくるっていう。
つまり、このクロムクロの構造であの敵幹部たちの会議シーンを絵で見せてしまうという、とんでもない暴投ではないかっていうことなんですが。吹くでしょ、あれは。進撃の巨人が、諌山先生が描きたくないと思ってるイマージュを全部凝縮したのがあの会議なんですよ。それを絵にすることでクロムクロは2クールで終われる進撃の巨人になりうるわけですが。

なんといいますか、子供≒オタクが自分の好きなものをヒステリックに出力したものを作家性としてグルーヴさせていくような流れを無理やり捻じ曲げてしまうというか、手品の種明かしをやりながらトリックを見せられているというか。一言で言えば、すごいと思われたいという欲望が微塵も感じられないw そこが逆にクロムクロはすごいw もうほとんど良心しかないっていう。ラーメン屋と甲冑姿でM・A・Oちゃんが王のUTSUWAになってしまうんじゃないかっていうくらい良心しかない。進撃の巨人を実在性ミリオンアーサー的な良心でもって2クールで終わらせるっていう。メタにもほどがある見方をしてしまっているので、もうだめですね。

一方、カバネリは1クールで終わる制約の元で進撃っぽい世界で語られるひとつの寓話足りえていると思います。ある意味では進撃のフォロワーの初期衝動を作品として着地して成立させるひとつのモデルですね。魅力的だったかというとまあ別だけど。まあウルトラマンになる前の進撃ふうというか、ブランキージェットシティーふうの心象風景というか、列車に乗って、壁の向こうの、果てのない荒野への旅みたいなw そういうアトモスフィアがありました。

あとは、はいふりですかね、はいふりが、1クールかけて、もかちゃんを助けることをめぐっての話をやっていて、すごいいいなって思ったんですよ。艦長がんばれって。もかちゃんがネズミにギアスかけられてたら危なかったね。でもよかった。(素

どのような舞台設定で、どういうキャラクターをどんなふうにして救えばいいのだろうか、というのは10年代に限らず普遍的なものだと思うけども、アニメの問題意識として地下水脈的な場所に押しやられているような気がしますw

特殊な状況下で発揮されるヒロイズムに対しての、鑑賞者からの、うざい、わがまま、というみんな大好きリアリズム合戦であるw
まあ全然、観測した私の勘違いかもしれないんだけれども。生駒が、主人公的な問題を抱えさせられ、ビルドゥングスロマンめいていることに、安心して価値を判断し、兄様の悪役としてのうつろさにおいては、思考を停止してしまう、それくらいの態度で週一で見てしまうわけですよね。

無名ちゃんを助けて美馬を殺す、という言葉を口にしてしまっている生駒、もかちゃんを助けたい艦長のどちらがどうだろう、という。そんなことを考えていました。

進撃やガルパンとかの、元ネタからのずらし具合、奇妙に荒廃した架空の世界においての汽車と軍艦、複数のキャラによるランダムなアフェクションによる作用の効果という、1クールの物語表現の試行錯誤が感じられたような、そんな感じです。