設定への供物、リア充への供物、ヒーローへの供物

セカチューだったのでちょっとびっくり。むしろリア充小説としてはふさわしいのかもしれないな。感動できないやつはリア充になれない。作品世界においてリア充が経験する、難病ネタの青春小説であった。
メインヒロインが主役のエピソードだったんだけど、もうキリトはほとんど作品世界から乖離している。作中で「あの人はすごすぎてこの物語にふさわしくない」(意訳)とまで言われてしまっている。キリトだけが先に物語の秘密に気づく、ヒロインたちのボス戦の手助けするときにログナーみたいになる、筋書き進めるために病院の住所をヒロインに教える、何なんだよお前は状態。
作者の無邪気な傲慢さがわりとストレートに出ていて、ネット発のあれやこれやと似たような欲望がうっすらと透けて見えるという、まあこれもネット発だけど。なんかネットでオリジナル書く人のロマンの傾向で社会のありようを導くビジョン云々ってのが目立つね。このエピソードも難病とヴァーチャルリアリティを絡めて世の中のありようをチラっと提示していくんだけど、でも結局本筋はヒロインに必殺技のスキルを譲る話に難病ネタ絡めただけw あと、オカンにぶつかっていく勇気を闘病してる人からもらうw 作者の作った設定とキャラを駆動させるためにこういう話をやるのはあんまし好きではない。
あとがきでも作者が自分で自分の作劇の悪癖について色々言ってるんだけど、まさに死ぬために出てきた新キャラの難病物語にメインキャラクターたちが立ち会ってるだけだったよ。まだ一昔前に流行った純愛で主役の片割れが死ぬ話のほうが誠実なんじゃないかってくらい。でもこういう話を書いてしまうのが川原礫っていう作家なんだよな。(2回目) 

昨日はヒーロー願望とリア充願望なんて言ったけど、魔法科の彼とかこっちのキリトに作者が纏わせたいのは不可侵の聖性なのかもなあ。飄々としていて、ちょい天然入ってて(女性キャラ視点限定)、どこか浮世離れしていて自分では手に負えない雰囲気を持ってるタイプ(とヒロインたちが思い込む)。まあ、メタっぽくならないでオッサンセンスで書かれた気の回る優しい男の子みたいなキャラにするとイマドキのラノベというメディアではそのような聖性を纏ってしまうという消費構造になっているだけかもしれない。

俺TUEEE&評価TAKEEEというヨタを思いついたけど、思いついただけです。

2日連続ではてなを更新するときの迸る00年代中盤感。いいね!