なかったことにしたいんだろうなと思いたい。

零崎軋識の人間ノック (講談社ノベルス)

零崎軋識の人間ノック (講談社ノベルス)

ただのキャラ小説としては良かったよ。大枠の戯言シリーズで残してある空白を埋めていく小枠のシリーズのくせに「俺の考えたサーヴァント」な語りだけでここまで読ませるのはすごいと思う。もし戯言が完結してなかったらもっとワクワクして読んだだろう。しかし「僕たちは、幸せになった。」という帯はシリーズそのものにも巻かれてしまったので物語が広がらない。二次創作みたいなもんで「萩原子荻萌え」と言えばいいだけだった。
死ななくてもいいキャラを殺すことで新青春だった戯言は結局こうなるしかない皮肉。萩原子荻もかわいそうだな、作者の理不尽な殺しと萌えキャラ化を担わされて。しおぎんだけじゃないけど。アニメで云うとこの1話だけのゲストヒロインを虐殺しといて「お気に入り」とのたまう西尾はやっぱりファウストなんだと思ったよ。戯言の後半で萩原子荻をやたら「すげえすげえ」と作中で言わせてる時は、あいつそんなすごかったっけか?と思ったものだが、あれはいーちゃんがジョーカーみたいな存在でいの字といると誰もがなんか変になるみたいな設定というか作者と読者の暗黙の了解みたいなもんがあったようななかったような。
「壊れた青春」のせいで殺されたキャラがはしゃいでるのは微妙すぎる。萩原子荻は可愛すぎる。
「甘えるな」とクラスメイトを自死に追い込むデスメタルばりに殺伐としていた小説を書いていた頃のいっくんと悩める零崎軋識に人類最強が優しく諭してくれるフレンチポップな小説を書くようになったいっくんの狭間で我はしおぎんの喪に服す。せめて、人間らしく。