最高でございます

悲劇週間

悲劇週間

こういう小説を小説っていうのだろうなあ、とわけの分からない感想が浮かぶ。ランボー経由で堀口大學の仕事を知るベタな高校生の頃を思い出しつつ。現代的な問題はほとんど読み取れないけど、もうヤバイ。世界はこんなにも豊饒ですよ。少なくともこの小説の中では。しかし矢作俊彦ってホント不思議な作家だな。捉えどころが無いというかさ。えーと、まず宝塚でもやれそうなくらいのお話です。主人公とヒロインの恋が萌える萌える。メキシコと日本の歴史が重層的に語られるんですがこれがまた粋なんですわ。史実と創作を織り交ぜて優しくも冷徹に、でも突き放さず寄り添うように。んで語っている本人もそこでは世界と繋がっているわけで、その今ここに生きているさ加減が絶妙。ここで語られる世界は輝きまくっているわけなんですが、もしかしたらこういう書き方(激動の世界を生きたであろう詩人の自伝的創作青春小説)でしか輝けないのかもしれないとも思ってしまったよ。これを現代の日本でやれっつっても出来ないのが俺たちの問題なのかもしれない。俺たちは世界が豊饒であるということをあまりに知らなさ過ぎるし、知る術もまたほとんど持っていない。