レジンキャストミルク〈2〉 (電撃文庫)

レジンキャストミルク〈2〉 (電撃文庫)

藤原祐はこれの1巻が初で結構好みだったんだけど、2巻も良いです。戯言シリーズよりも。むしろそれへの批評性も読み取るべき小説。世間じゃあポスト西尾維新なんてフレーズも出てくるくらいなんでまあこういうのも出てきて当然かと思うのですが、主人公が所詮自分は高校生というのを自覚してるのがいいです。学校での関係でしかストーリーを動かしませんという宣言みたいなこともやってるし。ブギーポップから西尾、みたいな流れの中には当然入るんだけど多分作者は戯言を読んでるけどあんま好きじゃない。妄想だけどな。「世界がどうとか言ってるけど結局こういうことだろ」みたいな皮肉にもなってる。情報の空白が最低限でキャラの感情と過去が全て。だからドライヴ感とかカタルシスはあんまり無い。でも思春期の暗い側面と設定をうまく利用してサスペンス仕立になってるので退屈はしません。00年代の観念的、哲学的な饒舌さというのはこの世界のままならなさをどうにかして誤魔化したいが故に生じるはずでそれのために世界観やら設定やら環境やらを構築したり空白にしたりするんだけどこれはその流れを引き継ぎつつ非常にバランスよくライトノベルしてます。ラスボスかどうか分からんのだけどその人は世界を観念で捉えていて、もっと先へ行きたい派なんで主人公にちょっかい出してくる。んで主人公に自分の答えとは違うものを期待してたりしてるというのはまた妄想なんだけど何気に主人公たちの導き役なんで萌えます。彼は。日常パートも上手い。描写が丁寧で読者に媚びるようなシーンもないので(人によっては違うかも)上品な手触り。イラストレーターとのコラボもいい感じに作用してるので2006年注目のシリーズ。タイトルがいいよね、レジンキャストミルク