からっぽの少年少女たちへ

アクアポリスQ

アクアポリスQ

猥雑で退廃的な雰囲気の架空都市を舞台にしたビルドゥングスロマンという、SF的萌え要素の基本中の基本を津原泰水が書きました。うまいよ、当たり前に。だが物足りぬ。おそらく原稿依頼がこれくらいの感じで、というのを依頼通りに書いてしまえるのだろう。天才の手遊びと言ってしまいたいくらい。中編と言ってもいい枚数の中で巧みにコントロールされるのも読者の快楽ではある。萌えるし燃えるし。文句は無い。主人公の高潔さみたいなものってオイラみたいなオタが忘れがちなものなので大変感銘を受けましたよ。倒錯も屈折もせずに世界に立ち向かうこと。でもこれの2倍は枚数欲しかった。舞台が魅力的なだけに余計そう思う。

そういや津原泰水の公式サイトってやたら内容が濃くって自著のプレゼンしてるページとか新刊ごとにあったりしてそういう小説外で小説を演出するのって多いのか少ないのか分からんけどスタンスとしてありがたい。デザインも単なる宣伝以上のものなんでマジなんだなあというのが分かる。カコイイ。