現代冒険異能

新装版  カディスの赤い星(上) (講談社文庫)

新装版 カディスの赤い星(上) (講談社文庫)

関係ないけど今年のSF界はコマツイズデッドだったね。名を冠した賞で自分が落とした作品が二つとも大好評でSF大賞候補にもなっちゃって。デッドというかイジメ、リンチ。
なんかブラックラグーンみたいな現代冒険異能が読みたいなと思いつつ何読めばいいかわかんねえので国内冒険小説で有名なのを何冊か読んだうちの1冊。約20年前の直木、冒険協会、推協賞トリプル受賞。ミーハー乙。作品の構図が学園異能とあんま変わらなくてこういうのって中年向けのラノベみてーなもんかと納得。マッチョな願望を上品に見せて、凝った構成にしてっていう。オッサン向けなんでビルドゥングスもないし戦闘美(少)女と共闘っていうわけじゃないけど。革命がどうたらこうたらな一般文芸って全共闘世代向けのドリー夢小説(大意)という叩かれ方をするのをよく見るんだけど俺も確かに気持ち良かったよ。まだ二十代なのに。現代革命異能(デスノ)世代だからな。学園の代わりに社会人、異世界の代わりに革命の残滓、異国の紛争。ヒロインもそれぞれ用意してキャッキャウフフ、と。邪気眼じゃあるめえし。そこは円環少女がすでに通過した道。読んでてブラクラとか円環ってフェティッシュやら流行のガジェットやらでビルドアップしながらテーマ、モチーフの継承と発明も忘れずに現代的な見せ方しとるなということをぼんやりと考えた。冒険小説的なものって隔世遺伝ぽいけどな。奈須まんも80年代だし。そういう意味じゃ広江と奈須のリスペクトも偶然ではあるまい。月姫2は世界各地を又に駆けた現代冒険異能で10年代の幕開けに相応しい大作になるだろうな。