キック・アス

キック・アスがようつべに晒されていくところまでは傑作だった。それ以降は微妙ってほどでもないけど凄みは霧散しちゃったね。後半はもう主人公が脇役の完全に別の話w ラノベに例えると1巻と2巻のそれぞれ前半と後半をムリヤリ繋げたみたいな構成になっていてリアリティのピントがガタガタになっている。そのガタガタぶりはフィルムのイマージュにもこれみよがしに刻まれるのでメタっぽくあえてこうしてるんだと言われればそれまでだけどちょっと釈然としない。

生真面目に見れば、これがコメディとしてしか成立できないのがしんどいところだなと思ったよ。実際ギャグシーンは普通におもしろいのでみんな笑ってるんだよ、客は。商業映画としてすごく優秀だと思うけど、むう、と。

構造的には完全にラノベで、ヒーローに憧れてキック・アスとして活動を始めたオタク男子のところにシャナとアラストールの親子がクロエ・モレッツとニコラス・ケイジの格好してやってくるんですよ。で、主人公がようつべに晒されるまでは一般文芸青春小説だったのにこいつらが出てきてからは現代アメコミ異能になってしまう。この親子の復讐譚に巻き込まれてその中で主人公は変化していくという構成なんだけど、なんかすっきりしないんだよね。

現代的なヒーローとして描くならキック・アスがマフィアへの復讐に燃える親子と出会う話を描かなければいけないはずなんだけど、そのためには最初に書いた1巻にあたる話が必要でそれは30分で終わってしまうので。まあ原作があるから、でも原作も聞くところによるとアレな部分が改変されてるだけで現代の正義の話をしようってものではないらしいし。

観る前にも感想を色々ツイッターで見かけてて幼女がガンガンに殺人しまくってるところが気になるというPC的なところに戸惑ってる人がけっこういたんだけど実際見たらニコラス・ケイジの殺人だって普通におかしかったなw

まあそういう細かいことはいいんだよと。優秀だけど映画としてのパッケージングが下手なだけでアクションコメディ、パーティムービーとしてみれば最高におもしろい。最後のジョーカーのセリフの引用もバッチリ決まっている。

これはEDで使われている曲なんですが、ロック少女の意匠、まあこれはけいおん!との同時代的現象で、なわけあるか。でもこのボーカルのテイラー・モンセンは17歳だよ。やっぱりけいおん!だよ? でもこういう若干こじらせたロックンロールイズムと青春小説的自意識は作品を貫いているものだし。
ラノベ云々と言ったことからも分かるとおり基本的にティーン向け映画ではあるのだろうなあと。日本だとラノベ原作みーまーの実写に大手事務所スターダストのプッシュする大政絢が主演して柴崎コウが主題歌やります、というラインと似たようなものかと。

ゴシップガールとかいう若者版セックスアンドザシティと言われているらしいドラマに出てる人なんですが、そういうとこで露出している若い世代に人気のある女優の歌手活動がEDになっていたりね。イマドキの若者への目配せとか、作中でもLOSTの最終回を見れなかった、みたいなセリフがあったり、消費者と地続きのリアリティの中で生きている感覚を導入しているところがピントがガタガタになっている原因でもあるのかなーと。ウォッチメンと並べるとリアリティのレイヤーが先進国消費社会の若者寄りで、なおかつボンクラ趣味でのハイコンテクストなところがある。

あと音楽はすごい良かった。色んな文脈で引用とかあるっぽい。幼児向け番組のテーマ曲だったりエルヴィス・プレスリーだったり。

書いてて思いついた、これガンスリなんだ。いや、特に話は広がらないのだが。