円環の理に導かれて読みました。

円環のパラダイム (一迅社文庫 せ 1-3)

円環のパラダイム (一迅社文庫 せ 1-3)

記事タイトルに引用したギャグSS読んだんですけどおもしろかった。
http://himarin.net/archives/3054997.html
てなわけで、3巻分くらいのエピソードを強引に1巻にまとめたようなSF学園異能。この作者のは他に何作か読んでるけど微妙に波長が合わなくて、まあこれも「ああ、いつものだ」と思うところもあったんですけどそれを置いても褒めてもいいと思うくらいでした。コンテンツとしては文章のエクリチュール感があんまりないし、造語が野暮ったいし、展開の演出も凝ってるとはいいがたいし、気持ちいいカタルシスもないっちゃないんだけど。
なんでもかんでもまどマギにこじつけるという意味ではなく、普通に共通項を見出せるものではあると。
世間ではまどマギ関連書籍として『紫色のクオリア』などが話題ですが、「いや、そうじゃねえだろ」と。放送中『ぼくと魔女式アポカリプス』とか言ったらケチつけられたりもしたけどw
一体何がキャラクターを異能者、魔法少女足らしめるのか。どのような舞台装置によって異能や、ループ現象が要請されるのか。その多くはまず契約によって為されるのが昨今の常套である。この作品もまずは外部の事情によってそれがもたらされる。

基本設定としては、地球が宇宙的規模というか多数の異世界的規模のバトルロワイヤル状況に巻き込まれて、異世界の種族(こいつらはほとんど精神体みたいに描かれる)に対し、人間が宿主になって「共生」することでその異世界種族の異能を借り物っぽい感じで行使することを可能としているのですが、そのへんの設定がけっこうラディカルで地球そのものが謎の現象でめちゃくちゃになっているヒャッハーな状態、モブキャラレベルでも自由意志で契約できたり、逆に人間であることにこだわる一般人とかもいたり。
世界改変の現象で「門」と呼ばれる移動手段でしかそれぞれの地域を移動できなくなって、場所によってはモンハンみたいな冒険しなけりゃいけなかったり、異世界種族がしかけた他の種族をワナにかけるためだったり。まあ地球はトンデモ地獄になっちゃったんですな。ポストアポカリプスですよ。人類全滅しそうなんですよ。

主人公と幼馴染系の妹キャラはヒャッハー状態の地球を半年間放浪し、とある異世界種族と友好関係を築けた「学校」と呼ばれる子供ばっかりのコミュニティに流れ着き、そこで事件に巻き込まれ、主人公は自分自身の未来とか考えたり、恋愛とかを経験していくという設定はトンデモSFだけど真っ当な異能モノでもある。
バトロワ状況となるともちろん聖杯戦争っぽくもなっていて、人間に共生している異世界の種族は「創造者」と呼ばれる上位存在の根源に至るために作られた、みたいなことも語られ、人間と異世界種族はもちろん、そこから枝分かれする主義、主張、立場ごとの利害関係もきっちり描こうとしているのが好ましかった。登場人物はたいてい異世界種族の宿主になっているのだけど、となると会話するだけでもテクストとして二重の意味を与えられるわけです。異世界種族は自分の宿主が異能を行使しすぎるとしばらく眠ってしまうという設定で、そのスキに主人公が自分の秘密をヒロインに打ち明けるシーンがあったりとかね。異世界種族は宿主にストレスを与えないために自分から眠ったりもしてくれて、どっかのインキュベーターと違って優しくもあるので、茶番っぽさはさほど感じなかった。
そして主人公と妹系キャラの二人の異能は異世界種族との「共生」ではなく、過去にその上位存在に接触したことがあるからという特異点設定で、それが物語を牽引していく要素の一つでもあるのだけど、そういうチート設定っぷりで白けることもなく、ちゃんと物語の中でドライブ感を生んでいたし。上位存在に接触するだけでトンデモな進化を得てしまうというブラックボックスなテイストもある。

序盤でまどマギを意識してしまったので、まあしょうがないw 舞台設定のパワーバランスを調整してレイヤーを追加するとこういうふうになるのかなあと。まあ元々まどマギは作劇としては洗練されているわけではないので比べるものではないかもしれないのだけど。
立場的には、主人公=ほむら、幼馴染系妹キャラ=まどか。二人は特権的な振る舞いを許され、主人公は妹キャラを半年間世界の悪意から守ってきたという自負があり、そういうところはループして悲劇キャラ気取りのほむらに当たる。
そして他のキャラはインキュベーターと契約したヘボキャラと考えてくれてもいい。でもヘボキャラが舞台装置のマネキンではなく、設定のパワーバランスの中でちゃんと血肉を与えられているのでヒロインの親友キャラが悪意でマミられたりして、さやかみたいに特攻しようとするのだけど主人公はそれを止めたりするんですなあ。さすがラノベの主人公w
そして妹キャラの異能は、上位存在のさらに上というインフレトンデモ設定。そのせいかただの便利キャラっぽくなってしまっているけどw 本作はこの1巻で打ち切りだけど、続いていたらきっとまどかみたいに世界改変でもかましたんじゃないかしら。
この二人は半年間メチャクチャになった世界を彷徨ってほむらみたいにやさぐれていたんだけど、「学校」というコミュニティによってそのやさぐれをほぐされて、貴種流離譚よろしく、これから本格的に世界の秘密を巡る政治的闘争劇に巻き込まれていくことになるであろうという〆で、おもしろかったよ。
ラノベらしく、主人公はモテてしまうのでまどか厨のほむらと違って他のヒロイン(というかメインヒロインはこっちなんだけど)を考えないといけないように世界はデザインされてしまっている。ほむらはまどかのことだけ考えてればいいようにデザインされてしまっている。この世界は何ものかによってデザインされてしまっている。

そして、イマジネーター……。